やけど (熱傷)になりました。痛いです-大和クリニック-木更津市の皮膚科
やけど とはどういうものですか?
皮膚組織が熱を受けて損傷する病気です。高温の液体、固体や湯気などが一定時間以上接すると生じるものです。熱の直接作用により皮膚・粘膜組織が変性し、血管も損傷し、血栓を形成し、血管透過性が亢進し、局所のうっ血と浮腫を起こします。その結果赤いはんてんや水ぶくれが生じます。重度の場合は組織が壊死します。湯たんぽや使い捨てカイロのように高温でなくても、比較的低い温度(44~60度)に長時間皮膚があたることで、低温熱傷になることがあります。
やけど の原因はどのようなものがありますか?
1)高温の液体:やかんやポットの湯、コーヒーやお茶、てんぷら油、カップ麺、味噌汁、高温の浴槽(老人、子供)など
2)高温の固体:ストーブやアイロン、ホットプレートなど熱性固体
3)湯気:電気炊飯器やポットの水蒸気の噴出口やファンヒータの吹き出し口などーーー湯気は熱湯以上に温度が高いので短時間で簡単にやけどとなります。
4)直接の炎:調理中の着衣への引火、仏壇のロウソクから着衣への引火、火災、花火によるものなど
5)特殊なやけど:薬品(酸、アルカリ溶液など)による化学熱傷、電流(家庭電源、落雷など)による電撃傷など
6)低温やけど(低温熱傷):下腿に多く、原因としては湯たんぽや電気あんか、電気毛布、使い捨てカイロ、こたつなどによるものがあります。低温やけど(低温熱傷)は深いやけどとなりやすく、専門的治療が必要となる場合が多いです。冬に高齢者に突然、床ずれの好発部位でない所に壊死性皮膚潰瘍が出た場合、低温熱傷を第一に考えます。高齢者では皮膚が薄く近くが鈍麻しているため低温熱傷を発生しやすいです。
やけど の深さとはどういうものですか?深さでどう違うのですか?
障害の及ぶ皮膚の深さにより以下の4段階に分類されます。
1)Ⅰ度熱傷(表皮熱傷):Ⅰ度は日焼けと同じように皮膚に赤み、むくみが出る程度です。Ⅰ度熱傷では多くの場合炎症を抑える外用剤などでほとんど後遺症を残さず治ります。後遺症としては一次的な色素沈着。
2)浅達性Ⅱ度熱傷(真皮浅層熱傷):水ぶくれができるのが特徴で、ヒリヒリとした強い痛みを伴います。水ぶくれが破れるとびらんになります。2週間程で表皮の再生(上皮化)、皮膚ができます。後遺症としては色素沈着、色素脱失があります。色素沈着は紫外線に当たることが原因となりますので紫外線を防ぐ遮光が必要です。瘢痕は残りません。
3)深達性Ⅱ度熱傷(真皮深層熱傷):水ぶくれを押しても赤みが消えません。水ぶくれが破れると表在性の壊死を伴った潰瘍になります。鈍い痛みがあります。障害が真皮中層以下まで及び、真皮が不可逆性に変性するため毛包から表皮の再生(上皮化)が期待できないため、受傷部位周辺からの上皮化を待つことになり、浅達性Ⅱ度熱傷(真皮浅層熱傷)と比べて表皮の再生(上皮化)に要する時間が3~4週間と長いです。色素沈着と瘢痕が残ります。
4)Ⅲ度熱傷(皮下熱傷):皮膚の全部の層が損傷します。皮膚に血の気がなくなり蠟のように白くなったり、炎で受傷した場合には炭のように黒くなったりします。Ⅲ度になると痛みを感じる神経まで損傷されるので逆に痛くないのが特徴です。Ⅲ度熱傷の場合には皮膚の障害が強く、治るのに時間がかかるため小範囲の場合でも医療機関での治療をおすすめします。しばしば高度の瘢痕、ケロイドを残します。また関節部分であれば拘縮をきたし、機能障害になることもあります。手術等専門的な治療が必要になり、1か月以上の治療期間を要することも少なくありません。また傷あとが残ることが多いです。瘢痕から数十年後に癌ができることもあります。
*表面上の皮膚の変化では水ぶくれがあれば、Ⅱ度の熱傷と考えますが、実際には深部の皮下脂肪組織では壊死を起こしており、Ⅲ度熱傷の状態のこともあります。
*やけどを起こした直後に適切な冷却が行われなかった場合や、細菌感染を合併した場合には、初期の深達度よりさらに深く進行します。
*皮膚の薄い子供や老人では損傷レベルが深くなります。小児や高齢者、糖尿病などの合併症をお持ちの方は、受傷後経過とともにやけどの傷が深くなる場合があるので、より慎重な管理が必要となります。
やけど の応急処置はどうすればいいですか?
直ちに冷却することが大切です。これにより熱による皮膚への損傷が深くなることを防ぐだけでなく、受傷部位の痛みをやわらげることができます。
この場合、無理に衣服を脱がず、水道水などの流水を衣服の上から直接流します。小範囲であれば水道の流水で、洗面器に水道水をためて冷やす、冷水に浸したタオルで冷やす、広範囲であればお風呂のシャワーで冷やし、冷却は20分くらい行います。使用する水疱(水ぶくれ)がある場合は出来るだけ破らないようにしましょう。手指のやけどの場合、指輪をあらかじめ外すようにします。
大きな病院での入院治療が必要な時とはどういう場合ですか?
1)特殊部位(顔面・手足・会陰部)のⅡ度・Ⅲ度熱傷、気道熱傷(熱い空気を吸うことでのどや気管がやけどした状態)・電撃傷・化学熱傷などの特殊熱傷があるとき。
2)熱傷の範囲がII度熱傷で全体表の皮膚の15%を超える場合やIII度熱傷が2%を超える場合は入院して治療を受けることが原則です。
*やけどの面積の計算方法:大人では9の法則、小児では5の法則が良く用いられます。9の法則では頭部顔面が9%、両上肢がそれぞれ9%、躯幹前面と後面がそれぞれ18%、両下肢がそれぞれ18%、会陰部1%と計算します。小児に用いる5の法則では9の法則に比べて頭部の割合(幼児では20%、小児では15%)が多く算出されます。
やけど の治療はどうすればよいですか?
1)Ⅰ度・Ⅱ度の浅いやけどの場合には、軟膏や創傷被覆材による治療が行われます。浅いやけどでは傷の中に表皮の基となる基底細胞が多く残っているので、ここから表皮の再生(上皮化)が期待できます。
2)深いⅡ度のやけどの場合にはキズの中に上皮化の基となる細胞が少なくなってしまい、外用剤や創傷被覆材の治療のみでは治癒に時間がかかり、後遺症を残す可能性が高くなります。またⅢ度のやけどとなってしまった皮膚は血流が無くなり、皮膚が死んでしまった状態(壊死)になっています。壊死した皮膚をそのまま残しておくと細菌の感染源となる恐れがあるので、基本的には切除します。これをデブリードマンといいます。植皮術などの手術治療が必要となる場合は入院して治療を受けることになりますが、この場合にはやけどの治療した部位に加えて、移植するために皮膚をとる部位にも傷跡を残します。ケロイドやひきつれ(瘢痕拘縮)が高度な場合には手術による治療が必要となる場合があります。
やけど における生活上の注意点は何ですか?
1)炊飯器やポットの蒸気の吹き出し口、熱湯や汁物などの高温の液体、アイロン、ストーブなどの熱源を小児の手の届く範囲に放置しないよう気をつけます。
2)テーブルクロスなどを使用しない(子供が引っ張ります)よう気をつけます。
3)電気コードや電源のソケットに注意します。
4)湯たんぽや電気あんか、電気毛布、使い捨てカイロなどにより低温やけど(低温熱傷)になることがありますので、扱いに注意しまてください。44℃では3~4時間、46℃では30分~1時間、50℃では2~3分で低温やけどになるといわれています。湯たんぽはタオルやカバーで包んでいても、長時間身体に接触させると低温やけどになるおそれがあります。湯たんぽは布団を暖めるのみに使用し、布団が暖まったら湯たんぽを取り出して就寝しましょう。皮膚の薄い高齢者や乳幼児に、飲酒後に熟睡しているとき、下肢などに麻痺がある方、睡眠薬などを服用している方、糖尿病で末梢神経障害のある方は特に注意が必要です。