精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)て何ですか?-大和クリニック-木更津市の泌尿器科

精索静脈瘤とはどういうものですか?

 陰嚢部(精巣などが入った袋状のもの)にある精巣上体を出た精管(精子の通り道)は外精筋膜で包まれながらそけい部(下腹部の足の付け根あたり)を通って骨盤腔内に入ります。精索とは精子の通り道である精管・血管・リンパ管・神経などが束になったものです。その中に静脈も通っています。精巣から近い所では、細かく枝分かれした網目のようになっていて、その蔓状(つるじょう)の静脈の流れが悪くなり、異常にふくらんだ状態を精索静脈瘤といいます。精索静脈瘤は通常痛みはありませんが、精巣機能の低下(精液分析の異常、精子数の減少、精子の運動性の低下、精子の形態異常)の最も一般的な原因であり、不妊の原因として重要です。

精索静脈瘤の原因は何ですか?

精索静脈瘤の正確な原因は不明です。内精静脈の静脈血流のうっ血が一因とされています。

左内精静脈は右よりも長く、左の腎臓の静脈に直角に合流します。右内精静脈は下大静脈に斜めに合流します。

左腎静脈が大動脈と上腸間膜動脈の間にはさまれて圧迫されることがあり,静脈の圧力が高くなることがあります。

内精静脈の逆流をふせぐ弁のしくみが不十分のため、静脈血が精巣へむかって逆流をしてしまうことがあるなどにより、陰嚢温度の上昇、精巣内の低酸素、酸化ストレス、腎臓や副腎からの有毒代謝物の逆流などが起こるためとされています。

精索静脈瘤の頻度はどの程度ですか?

男性不妊外来の30~40%の患者様に認められます。ただ、健常男性の15~20%にも認められます。精索静脈瘤を有する方の20~30%に精液検査で異常があります。

精索静脈瘤は右精巣よりも左精巣ではるかに一般的です。左側で80~90%を占めます。また重要なことは、臨床的な左精索静脈瘤は、多くの場合、無症状の右精索静脈瘤を伴うことです。 触知可能な左精索静脈瘤を持つ男性の最大 35 ~ 40% が、実際に両側の精索静脈瘤を持っている可能性があります。

精索静脈瘤の症状は何ですか?

精索静脈瘤患者は通常無症状であり、妊娠に失敗した後に不妊症の検査を求めることがよくあります。 精索静脈瘤患者の 2% ~ 10% が痛みを訴えます。陰嚢やそけい部の疼痛や違和感、不快感などです。精巣の発育障害、萎縮が認められることもあります。

精索静脈瘤の診断はどうしますか?

精索静脈瘤は通常無症状である。精索静脈瘤が十分に大きい場合、虫の袋のような外観です。精索静脈瘤は、通常陰嚢の左側で、精巣の上の柔らかいしこりとして現れます。右側や両側の精索静脈瘤も発生することがあります。陰嚢の痛みや重苦しさを訴えることもあります。多くの場合、不妊症の検査の過程で発見されます。

大きな静脈瘤(グレード3)は、見ただけで容易に同定できます。中型の静脈瘤(グレ-ド2)は、立位で何もしなくても確認できるものを指します。小型の静脈瘤(グレード1)は、立位で息をこらえてお腹に強く力を入れることで初めて触ることができる軽度のものです。

超音波検査で静脈が拡張(3mm以上)していたり、カラードプラー(血液の流れをみる)により血液の逆流所見が確認されたりします。

孤立性右側静脈瘤の原因として腎細胞がんの可能性を常に考慮します。 右側腎静脈腫瘍血栓が大静脈に進展して静脈閉塞を引き起こし、精索静脈閉塞と右側精索静脈瘤を生じることがあります。この可能性が考えられる場合は、CT撮影が推奨されます。

精索静脈瘤の治療はどうしますか?

現在の所、手術が最も有効な治療法です。精索静脈瘤が痛みや不快感を引き起こしている場合は、鎮痛剤の使用や陰嚢のサポートがまず行われます。精索静脈瘤による血液のうっ滞や精液所見の改善にホルモン療法や漢方薬,サプリメントが有用なこともあります。ビタミンA、E、C、B複合体、グルタチオン、パントテン酸、コエンザイムQ10、カルニチン、亜鉛、セレン、銅などの微量栄養素を含む栄養補助食品の使用を支持する報告もあります。精索静脈瘤を外科的に治療する場合、通常は外来手術となります。最も一般的なアプローチは、後腹膜腹腔鏡下手術、鼠径下腹腔鏡下手術、鼠径部下腹腔鏡下手術、または陰嚢内腹腔鏡下手術です。顕微鏡下低位結紮が良いとの報告があります。

精索静脈瘤の治療の効果はどうですか?

グレードの高い精索静脈瘤がある男性不妊症の方に手術を行った場合,手術後50~60%の患者さんで精液所見(精子濃度または運動率など)の改善がみられ,手術後1~2年の自然妊娠率は約30%に上昇すると報告されています。手術後、約70%で精液パラメータが改善し、40%から60%で受胎率が改善します。この精液の質の改善は通常、手術後約3~4ヵ月で顕著になり、6ヵ月で最終的なものとなりますとの別の報告もあります。

また,自然妊娠率の上昇のみでなく,人工授精,体外受精(IVF),顕微授精(ICSI)に対しても,精索静脈瘤の手術は治療成績を向上させていることが報告されています。精子のDNA損傷や精子機能の改善に寄与しているとされています。

精索静脈瘤は、精巣内のライディッヒ細胞によるテストステロン産生の低下を引き起こす可能性があります。 精索静脈瘤切除術により、手術した方の 80%以上 で血清テストステロン レベルが改善され、平均値は 100 ~ 140 ng/mL 増加したとの報告があります。

精索静脈瘤の手術が必要な理由は何ですか?

通常の対症療法では反応しない精巣の不快感や痛みの軽減、精巣の萎縮の軽減、および原因不明の男性不妊症の可能性への対処が理由です。 精索静脈瘤は精巣に進行性の損傷を引き起こし、さらなる萎縮や精液障害を引き起こす可能性があります。

男子不妊症への対処の場合、男子不妊症があり、触知可能な精索静脈瘤を認め、精液所見が悪く、女性パートナーの妊娠機能が正常、または女性不妊の原因が治療可能の場合は手術の適応があります。

精索静脈瘤と似ている病気は何ですか?

精巣上体炎、陰嚢水腫、そけいヘルニア、精液瘤、精巣腫瘍、精巣捻転、陰嚢部外傷

傍精巣腫瘍:傍精巣腫瘍は、傍精巣領域は精索、精巣白膜、精巣上体、精巣上体垂や精巣垂の痕跡器官などから構成されます。全陰嚢内腫瘍の約7%を占め、発生学的に種々の上皮,中皮や間葉系組織よりなるため,同部より発生する腫瘍は多様です。

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