帯状疱疹(昔の出来事をなかったことには出来ません)-大和クリニック-木更津市の皮膚科

Fさんは5日前に右の顔面から頭にかけて違和感を感じていましたが、そのまま放置していました。痛がゆさと、赤いブツブツが出現したため、これはおかしいと思い、クリニックを受診しました。帯状疱疹と診断され、投薬を受けました。鼻にもブツブツがあったため、眼科にも受診されましたが、特に問題ありませんでした。

帯状疱疹の原因は何でしょう?

帯状疱疹は、水痘(水ぼうそう)を引き起こすのと同じウイルスである水痘帯状疱疹ウイルスの再活性化によって引き起こされます。同ウイルスの最初の感染は水痘を引き起こします。水痘が治ると、ウイルスは後根神経節に潜伏し何年も休眠状態になります。最終的に、それは再活性化して神経経路に沿って皮膚に移動し、帯状疱疹を引き起こす可能性があります。しかし、水痘にかかったことのある人全員が帯状疱疹を発症するわけではありません。高齢者や免疫力の低下した人によくみられます。50才以上になると帯状疱疹の発症率は高くなります。日本人の90%がこのウイルスを持っていると言われています。日本人は80才までに約3人に1人が帯状疱疹になると言われています。

帯状疱疹の症状はどのようなものですか?

帯状疱疹のある人は、最も一般的に、1つまたは2つの隣接する皮膚分節(限局性帯状疱疹)に発疹があります。発疹は、胸椎に沿った体幹(胸の肋骨に沿った部分)に最もよく見られます。発疹は通常、体の正中線を越えません。まれに、3つ以上の皮膚分節に発疹が現れる場合、播種性帯状疱疹(空気感染,飛沫感染,接触感染で伝播すると考えられています)と呼ばれます。これは通常、免疫システムが低下または抑制されている人にのみ発生します。帯状疱疹は水痘と区別するのが難しい場合があります。

発疹は通常、皮膚文節に沿って帯状に出現します。痛みを伴う、かゆみを伴う、またはうずくような感覚を伴います。これらの症状は、発疹の発症に数日先行する場合があります。一部の人々はまた、前駆期に頭痛、羞明(まぶしさ)、および倦怠感、発熱を持っている可能性があります。

発疹は帯状に3〜5日にわたって形成され続け、水ぶくれができ、液体で満たされた水ぶくれが壊れて、次第に乾燥してかさぶたになります。それらは通常3〜4週間で治癒します。皮膚に永久的な色素沈着の変化と瘢痕が残るかもしれません。

* 1つの皮膚文節は、1つの脊髄神経根から伸びている感覚神経が支配する皮膚の領域です。

帯状疱疹の合併症にはどんなものがありますか?

帯状疱疹後神経痛

一部の人々にとって、帯状疱疹の痛みは水疱が治った後もずっと続きます。この状態は帯状疱疹後神経痛として知られており、損傷した神経線維が皮膚から脳に混乱した誇張された痛みのメッセージを送るときに発生します。

眼の障害

顔にある三叉神経節に潜伏していたウイルスが再活性化され、顔、額、まぶた、鼻などに発疹が生じた場合、角膜炎、角膜潰瘍、眼球運動障害、ぶどう膜炎、眼瞼炎、結膜炎、緑内障などを起こします。視力を失うこともあるかもしれません。

神経の障害

脳の炎症:脳炎・髄膜炎を合併するのはまれ(0.17%)です。ただ無症候性髄膜炎は比較的多いです(30~60%で髄液異常が、認められます)。臨床像から脳炎・髄膜炎の合併を予想することはできません。脳炎・髄膜炎合併の初期症状としては、発熱、頭痛を見ることが多いですが、嘔吐や髄膜刺激症状は多くないため、帯状疱疹の臨床像に関わらず発熱や頭痛が見られた場合、神経内科でみてもらう必要があります。顔面神経麻痺、または聴覚や平衡障害を引き起こす可能性があります。

排尿障害

尿閉を起こすこともあります。

細菌皮膚感染症

細菌皮膚感染症が起こるときもあります。

他の人にうつさないように、周りの人への注意をする必要があります。

水痘にかかったことがない人または水痘ワクチンをまだ受けていない人、特に免疫力が低下している人、妊婦、新生児との物理的接触を避ける必要があります。

帯状疱疹の治療はどのようにするのですか?

抗ウイルス薬

症状が軽い場合や中程度の場合には、内服薬(飲み薬)の抗ウイルス薬で治療することができます。アメナメビル(アメナリーフ:一番新しい薬です、腎臓の障害がある方にも使いやすいです、既存の抗ヘルペスウイルス薬とは異なる新規作用機序で、ヘルペスウイルスの増殖を初期段階で阻害します)、バラシクロビル(バルトレックス)、アシクロビル(ゾビラックス)、ファムシクロビル(ファンビル)などの内服薬が使用されます。発疹が出てから3日以内に飲みはじめるとよいとされています。

症状が重い場合や免疫力が低下している場合には、入院した上で抗ウイルス薬の点滴による治療が必要となることがあります。

痛みに対する治療

鎮痛薬:痛みの種類と程度にあわせて、様々な薬が使われます。

ぬり薬:いろいろなぬり薬が使われます。水疱(すいほう)の中のウイルスが外に出て、他の人にうつらないよう、皮膚を覆う効果もあります。

神経ブロック:夜も眠れないほどの強い痛みが続く場合に行われます。

帯状疱疹後神経痛の治療

以下は詳し過ぎますが、いろいろな薬が使用されます。

第一選択薬は、複数の神経障害性疼痛疾患に対して有効性が確認されているCa2+チャネルα2δリガンドであるプレガバリンやガバペンチン、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬であるデュロキセチン塩酸塩、三環系抗うつ薬であるアミトリプチリン塩酸塩、ノルトリプチリン塩酸塩、イミプラミン塩酸塩です。

第二選択薬は、1つの神経障害性疼痛疾患に対して有効性が確認されている薬物であるワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液、オピオイド鎮痛薬の1つであるトラマドール塩酸塩です。

第三選択薬はトラマドール塩酸塩以外のオピオイド鎮痛薬となります。

神経ブロック注射やレーザー治療が行われることもあります。

帯状疱疹の予防はどのようにしますか?(50才以上方に使用できます、他のワクチンと同様に接種すれば必ず予防出来るとは言えません)

シングリックスは2017年10月にアメリカで、2018年3月に日本で承認されました。シングリックスは5年以上にわたって(9年たっても効果があるとの報告もあります)帯状疱疹に対する予防をします。シングリックス®は、ウイルス成分でできた非生物ワクチンです。2回接種します。投与の間隔は2-6ヶ月です(2ヶ月後が推奨されています)。

シングリックスは、以前に生ワクチンを接種したことがある人や帯状疱疹を患っている人を含め、50歳以上の人に推奨されています。

「ビケン」製の帯状疱疹ワクチン(乾燥弱毒生水痘ワクチン)は、弱毒化された生きたウイルスが含まれています(生ワクチン)。1回接種します。現在アメリカでは販売されていません。

いずれかの帯状疱疹ワクチンの最も一般的な副作用は、発赤、痛み、圧痛、注射部位の腫れやかゆみ、および頭痛です。効果はシングリックスの方が強いと言われています。また副作用も強いと言われています。

ワクチンの比較

効果

「ビケン」製の帯状疱疹ワクチンはやや弱めです.60歳以上に使うと,帯状疱疹の発症がおおむね半減し,帯状疱疹後神経痛は約1/3にまで減ります.シングリックスは非常に強力です.帯状疱疹の発症頻度は,50歳以上の試験で3~5%にまでに激減し,70歳以上でも10%程度まで大幅に下がりました.帯状疱疹後神経痛もそれに見合って減少します.

副反応

重篤な副反応はまれです.ただ,注射部位が痛んだり腫れたりします.これは「ビケン」製の帯状疱疹ワクチンではごく軽くすみますが,シングリックスはかなり強いです.また,筋肉痛や疲労感,頭痛のような全身症状も、シングリックスに多いです.

価格

「ビケン」製の帯状疱疹ワクチン    8000円 1回接種

シングリックス            22000円 2回接種 合計44000円 

高価で、副作用も強いけど、出来るだけ予防したい人はシングリックス

副作用が怖くてコストも抑えたいけど、予防もしたい人は日本製、「ビケン」製の帯状疱疹ワクチン(水痘の予防に使用されます)

最後に

ここ1週間で顔から頭にかけての帯状疱疹の患者様を4人経験しました。右側が2人、左側2人でした。皆様眼の障害はありませんでした。本日も右側の同様な帯状疱疹の方がいらっしゃいました。眼科の先生に紹介状を書きました。

TEL:0438-25-2515