間質性膀胱炎・膀胱痛症候群 とはどういうものですか?-大和クリニック-木更津市の泌尿器科
間質性膀胱炎・膀胱痛症候群 とはどういうものですか?
間質性膀胱炎・膀胱痛症候群とは膀胱に関連する慢性の骨盤部の疼痛、圧迫感または不快感があり、尿意亢進や頻尿などの下部尿路症状を伴い、混同しうる疾患がない状態の総称と定義されています。
このうち膀胱粘膜に特徴的な発赤病変であるハンナ病変を認めるものをハンナ型間質性膀胱炎または間質性膀胱炎(ハンナ型)、それ以外を膀胱痛症候群と呼びます。
ハンナ病変とは、肉眼的には膀胱鏡所見における毛細血管の集ぞくを伴った膀胱粘膜の発赤部位のことです。この所見のあるなしが、両者の鑑別に重要とされています。膀胱三角部以外の膀胱後壁や側壁などが好発部位です。
顕微鏡で組織を観察すると、ハンナ型間質性膀胱炎では膀胱上皮の剥離や粘膜下層の強い炎症が、膀胱全体にみられ、また炎症に関連する多数の分子の遺伝子発現が亢進し、慢性炎症の所見です。対して、膀胱痛症候群は非炎症性の病気です。
強い膀胱・尿道痛、頻尿・尿意切迫感も強いため生活の質が著しく損なわれるという症状が似ていますが、ハンナ型間質性膀胱炎と膀胱痛症候群は、病態の異なる別個の疾患と考えられています。
間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の原因は何ですか?
いろいろな説がありますが、現在の所不明です。神経、内分泌、免疫、その他の機構の複雑な相互作用が関与していることを示す多くの証拠が示されています。
間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の頻度はどのくらいですか?
諸外国では有病率は統一された定義が大きく異なり、0.01% ~ 6.5% と推定されています 。アメリカ人女性の有病率は2.7%から6.5%の範囲です。フィンランドで10万人中300人、オーストリアでは10万人中206人、オーストリアでは10万人中147人です。韓国で女性の有病率は0.26%,すなわち10万人あたり26人、台湾においては10万人あたり22人(0.022%)です。2013年の調査では,わが国で治療中のIC患者数は約4,500人(0.004%:全人口の10万人あたり4.5人)と推定されていますが、実際はもっと多いと考えられています。男女比は1:5で女性に多いとされています。
中高齢の女性に多く、シェーグレン症候群、線維筋痛症、過敏性腸症候群などを合併することがあります。ハンナ型間質性膀胱炎の方がやや高齢で、症状も強い方が多いです。
間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の症状はどのようなものですか?
主な症状は、排尿症状を伴うまたは伴わない骨盤痛であり、下部尿路症状と疼痛・不快感に大別されます。膀胱内に尿がたまることで、膀胱壁が進展して起こる膀胱痛が典型的です。治らない頻尿、膀胱不快感、繰り返す膀胱炎症状がある場合、間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の可能性があります。若い方の症状は尿意切迫感、頻尿、排尿困難、性交痛、および外性器の痛みが大半を占めますが、高齢の方の症状は夜間頻尿、排尿痛が大半を占めます。
下部尿路症状
頻尿・尿意切迫感が代表的な症状です。昼間頻尿だけでなく、夜間頻尿を呈することもあります。1回排尿量の減少を伴うことがほとんどです。蓄尿により疼痛が惹起されるため頻尿になっていると言う説明もあります。残尿感、排尿困難を呈することもあります。
膀胱痛、特に膀胱に尿がたまってきたときの膀胱痛が典型的な症状としてあげられます。しかし,膀胱痛のない症例も少なくありません。膀胱痛はハンナ型間質性膀胱炎でやや重症です。頻尿が多いのは、実際にためられる量の減少だけではなく、膀胱に尿がたまってきたときの痛みをさけるために頻回に排尿しているためかもしれません。
疼痛・不快感
腰痛、下腹部痛、骨盤部痛、尿道痛、膣痛、会陰部痛、直腸痛、性交時痛などがあります。
膀胱に尿がたまる初期に不快感が起こるの特徴的です。
間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の検査はどうしますか?
検尿:尿沈渣で白血球が認められるのは約30%です、尿潜血も10%以下です
採血:前立腺特異抗原など検査します。
排尿日誌:1回排尿量の低下と排尿回数の増加を認めます。排尿回数を減らす目的で過度な飲水制限を行っている方もいます。
尿流測定:尿流量の低下を認めることもあります。
残尿測定:残尿量は一般的には正常です。
他の疾患を除外するための初期評価の一環として膀胱鏡検査が推奨されています。 膀胱鏡検査は診断に役立つだけでなく、ハンナ型間質性膀胱炎と膀胱痛症候群を区別することもでき、治療に対する反応の違いを考慮でき、治療に役立ちます
尿細胞診、超音波検査、CT、MRI(ある研究では拡散強調 MRIで高い膀胱壁信号強度が 間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の存在を確認するのに役立つことが実証されています)
間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の診断はどうしますか?
除外診断です。慢性的な膀胱・尿道痛および下部尿路症状(頻尿・尿意切迫感など)を呈する病気の内、他に原因となる病気を除外して、診断します。
除外しなければいけない病気としては、前立腺癌、膀胱癌、過活動膀胱、神経因性膀胱、前立腺肥大症、尿路結石、膀胱炎(放射性、薬剤性、細菌性など)、膀胱結核、尿道炎、尿道憩室、尿道狭窄、慢性前立腺炎、子宮内膜症、子宮筋腫、膣炎、更年期障害、神経性頻尿などがあります。
間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の治療はどうしますか?
治療は対症療法が中心となります。治療の目標は、膀胱の痛みを軽減し、患者の生活の質 (Qを改善することです。
- 保存的治療
- 行動療法:飲水のコントロール、定時排尿、膀胱訓練などがあります。尿の濃縮,尿を我慢した後(過度の膀胱充満)なども悪化の要因となります。逆に,水分摂取による尿の希釈で症状は改善がみられます。
- 食事療法:間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の方の、90%近くが飲食物の摂食後に症状の増悪を認めます。そのためやく87%の方が、症状を増悪させる飲食物を避けていました。酸性食品、トマト、グレープフルーツなどカリウムが多い食品、コーヒー、紅茶、チョコレート、かんきつ類、ビタミンC、香辛料、ワイン、ビール、、炭酸飲料などを避けます。
- 理学療法:下腹部、骨盤内外筋膜マッサージ
- 薬物療法
ハンナ型間質性膀胱炎に対しては、シクロスポリン、ステロイド
膀胱痛症候群に対しては、三環系抗うつ薬、抗ヒスタミン剤、トシル酸スプラタスト、シメチジン
疼痛に対して、プレガバリン、トラマドール、ガバペンチン、セレコキシブ、アセトアミノフェン
漢方薬(五林散、当帰芍薬散など)
- 膀胱腔/壁内注入療法
DMSO(Dimethyl sulfoxide)がただ一つハンナ型間質性膀胱炎の治療薬です。
- 外科的治療
- 膀胱水圧拡張術:最も良く行われている外科的治療です。有効率50%、有効期間2~6ヶ月程度です。約10%で症状の悪化が報告されています。膀胱痛症候群では、診断的治療として重要です。
- 経尿道的切除/焼却術:ハンナ型間質性膀胱炎の症状の改善に有効です。疼痛には有効ですが、下部尿路症状(頻尿・尿意切迫感など)には効果を認めないことが多いです。
- 膀胱摘出手術、膀胱拡大術:萎縮膀胱、膀胱尿管逆流などを呈する進行例に最終手段として行われます。
- その他の治療
- 電気神経刺激
- 高圧酸素療法
- ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法:ヨーロッパでは膀胱内注入が失敗した場合の選択肢としてこの併用療法を強く推奨されています。
- モノクローナル抗体は臨床研究段階です。
- 幹細胞療法も研究段階です。