過活動膀胱 とは?-大和クリニック-木更津市の泌尿器科

過ぎたるはなお及ばざるがごとしということわざがあります。(何事もやり過ぎることは、やり足りないことと同じくらい良くない)という意味で、中庸が大切であることを例えています。中庸とは、どちらにも偏らず中正なことを指します。英語ではToo much of one thing is good for nothing.(一つの物が多すぎれば何の役にも立たない。)Too much water drowns the miller.(水が多すぎると粉屋も溺れる)Too much is as bad as too little.(多過ぎるのは少な過ぎるのと同じくらい悪い)などと言うそうです。

膀胱の働きが過ぎてしまうといろいろ困ることになります。

過活動膀胱 とはどんな状態なのでしょうか?

過活動膀胱とは尿意切迫感(急に起こる非常に強い尿意で、我慢(がまん)することが困難な状態、つまりオシッコがしたくなったらがまんができない状態です)が必ずあり、かつ通常昼間頻尿、夜間頻尿を伴い、時に実際に間に合わない切迫性尿失禁が起こることがある症状症候群です。

過活動膀胱 はどの位の頻度で起こりますか?

過活動膀胱症状を排尿回数1日8回以上かつ尿意切迫感が週に1回以上とすると、有病率は約14.1%で、日本に1000万人以上の患者様がいると推定されています。頻度は年齢ともに上昇し、女性に頻度が高く、失禁を実際伴うものでは更に女性に多いとされています。

過活動膀胱 はどうして起こるのですか?

はっきりした原因は不明です。

神経疾患に起因する神経因性と神経疾患に起因しないものとに大きく2つの原因があるとされています。

神経因性には、

脳疾患:脳血管障害(脳出血、脳梗塞)、パジェット病、多系統萎縮症、正常圧水頭症、脳腫瘍など

脊髄疾患:脊髄損傷、多発性硬化症、二分脊椎、変形性脊椎症、椎間板ヘルニアなど

馬尾・末梢神経疾患:腰部脊柱管狭窄症、糖尿病性末梢神経障害など

非神経因性には、膀胱血流障害、自律神経系の活動亢進、膀胱の加齢、膀胱の炎症、女性ホルモン、テストステロンの低下、骨盤臓器脱、骨盤底弛緩、膀胱出口部閉塞など

過活動膀胱 の診断はどうしますか?

問診

尿意切迫感、頻尿、失禁、膀胱痛、尿閉など排尿症状の有無、歩行障害、麻痺などを聞きます。神経疾患、糖尿病、骨盤内手術、放射線療法などの既往歴、下部尿路症状を起こす薬剤を服用していないか等を聞きます。

過活動膀胱に対する質問票、排尿日誌なども使用します。

診察

一般的な下腹部の診察、直腸診、台上診などを行います。

検査

検尿、採血、超音波検査、膀胱鏡、CT、MRIなどを行います。

症状症候群のため、その他の疾患を鑑別することが重要です。

過活動膀胱のガイドラインでは鑑別すべきものとして

1.膀胱の異常:膀胱癌、膀胱結石、間質性膀胱炎

2.膀胱周囲の異常:子宮内膜症

3.前立腺・尿道の異常:前立腺癌、尿道結石

4.尿路性器感染症:細菌性膀胱炎、前立腺炎、尿道炎

5.その他:尿閉、多尿、心因性頻尿

などがあげられています。

過活動膀胱 の治療はどうしますか?

行動療法

1.現在内服している薬の作用、副作用を理解していただきます。過活動膀胱に関連するものがあれば、薬剤の調節を主治医にお願いすることもあります。

2.飲水指導:1日の尿量が20~25ml/kgになるように飲み物をとっていただきます。60kgの人でしたら、1200ml~1500mlとなります。

3.カフェイン、炭酸飲料、アルコールの取り方にも気をつけていただきます。サラダ、果物を食べ過ぎない、塩分を取り過ぎない、便秘改善、禁煙などを行っていただきます。

4.肥満の女性が減量すると、腹圧性尿失禁、切迫性尿失禁の頻度が減ると言われています。肥満は過活動膀胱にも関係があるとされています。

5.膀胱訓練:少しずつ排尿間隔をのばして行くことで、膀胱容量を増加させる訓練です。オシッコをがまんする時間を5分10分からはじめて徐々に排尿間隔をのばして、最終的に2~3時間の排尿間隔が得られるように訓練します。

6.骨盤底筋訓練:骨盤底筋の筋力を増すことで尿失禁を改善します。腹圧性尿失禁だけでなく、切迫性尿失禁、過活動膀胱にも有効と報告されています。

薬物療法

抗コリン剤:副交感神経終末末端から排尿筋へ放出されるアセチルコリンを遮断することにより、膀胱平滑筋に存在するムスカリン受容体へのアセチルコリンの結合を遮断することで膀胱を弛緩させます。ムスカリン受容体は全身に存在することから、唾液の分泌を抑えて口腔内乾燥、腸管の動きを押さえて便秘、認知機能の低下などの副作用があります。

抗コリン剤の適さない人は以下の病気の方です。1)閉塞隅角緑内障の人(抗コリン作用により眼圧が上昇し、症状を悪化させることがあります。2)本剤の成分に対し過敏症がある人3) 重症筋無力症の人(抗コリン作用による筋緊張低下のため、重症筋無力症の症状を悪化させるおそれがあります。4) 前立腺肥大症等尿路に閉塞性疾患のある人(抗コリン作用による膀胱平滑筋の弛緩、膀胱括約筋の緊張により排尿困難を悪化させるおそれがあります。)

開放性隅角緑内障、外科的治療が施行された閉塞隅角緑内障の人は使用可能です。

高齢者などの方で、多種類の薬を服用されている場合、その薬に抗コリン作用のあるものがないか気をつけておかなければいけません。抗コリン作用をもつ薬物にはフェノチアジン系などの抗精神病薬、三環系抗うつ薬、パーキンソン病治療薬(抗コリン薬)、第一世代ヒスタミンH1受容体拮抗薬、ヒスタミンH2受容体拮抗薬などがあります。

β3作動薬:膀胱のβ3アドレナリン受容体に結合して、膀胱平滑筋を弛緩させ、膀胱容量を増大します。βアドレナリン受容体刺激による動悸、頻脈、不整脈の出現に注意が必要です。抗コリン剤に比較して口内乾燥、便秘などの副作用が少ないと言われています。現在2種類の薬が使えます。

β3作動薬が適さないのは、ミラベグロン(ベタニス)では、本剤の成分に対し過敏症がある人、重い心臓病、重い肝臓病、妊娠中、授乳中の方です。フレカイニド酢酸塩あるいはプロパフェノン塩酸塩服用中の方です。ビベクロン(ベオーバ)では本剤の成分に対し過敏症がある人です。

抗コリン剤、β3作動薬ともに、前立腺肥大症等で出が悪い、いわゆる下部尿路の閉塞もあるような患者さんに使ってしまうと、膀胱の収縮が抑制されるので排尿障害が増悪して、最悪の場合、尿閉になります。
男性で、前立腺肥大症を合併する過活動膀胱の初期治療はα1遮断薬、ホスホジエステラーゼ阻害薬を使用します。過活動膀胱に対して十分な効果がない場合、抗コリン剤またはβ3作動薬との併用となります。併用療法となった場合は、併用する前また併用後の残尿測定などで、尿閉を起こさないよう十分注意が必要です。

その他の治療法として磁気刺激療法があります。

難治性 過活動膀胱 の治療はどうしますか?

神経変調療法、ボツリヌス毒素膀胱壁内注入療法などを行います。

TEL:0438-25-2515