慢性前立腺炎 とはどういうものですか?-大和クリニック-木更津市の泌尿器科
慢性前立腺炎 とはどういうものですか?
クルミほどの大きさの前立腺は、男性の膀胱のすぐ下にあります。膀胱から尿を排出する尿道の上部を囲んでいます。前立腺は、精液の一部 を生成します。
慢性前立腺炎は会陰部痛、陰茎部痛、陰嚢部痛、骨盤周囲の痛み、排尿時痛、射精時痛や不快感、頻尿、尿意切迫感などの排尿症状などを主な症状とする症候群です。
この文では、以下に記載してあるカテゴリーⅡとカテゴリーⅢを慢性前立腺炎として説明いたします。
慢性前立腺炎 は前立腺炎とどう違うのですか?
前立腺炎はアメリカ国立衛生研究所の分類でカテゴリーⅠからⅣに分けられます。
カテゴリーⅠは急性細菌性前立腺炎で急性に起こり、排尿時痛、排尿困難とともに発熱や悪寒を伴うものです。
カテゴリーⅡは慢性細菌性前立腺炎で慢性の経過で前立腺をマッサージによって尿道口から排出される前立腺圧出液に白血球、細菌を認め、発熱なく頻尿、残尿感、尿意切迫感などの症状があるものです。
カテゴリーⅢは慢性前立腺炎/骨盤痛症候群で、慢性に経過し前立腺圧出液に白血球を認めるⅢaと認めないⅢbとに分かれていますが、両方とも細菌は認めません。発熱なく頻尿、残尿感、尿意切迫感、会陰部痛、骨盤痛、尿道痛、肛門痛、会陰部骨盤内不快感などを症状とします。
カテゴリーⅣは無症候性炎症性前立腺炎で、慢性に経過し、無症状で、前立腺生検や前立腺摘除術などでえられた前立腺組織に炎症を認めるものです。
カテゴリーⅡ、Ⅲでは前立腺マッサージ前の中間尿で膿尿や細菌尿は認めません。
慢性前立腺炎 はどのような人に多いですか?
ほとんどの世代の男性に認められます。すべての年齢およびすべての背景の成人男性に影響を及ぼします。ある報告によれば、男性の約 5% は、人生のある時点で慢性前立腺炎の症状を経験すると言われています。
慢性前立腺炎 はどのようにして診断するのですか?
慢性前立腺炎には確定診断をする検査がありませんので、除外診断が重要です。一般的な病歴、内服している薬、カフェインやアルコールについて、性感染症のリスクを高める可能性のある性的接触の有無などについて質問します。
頻尿、残尿感、尿意切迫感などを有する50才以上の人では、前立腺肥大症、前立腺癌などを否定します。
排尿痛がある場合、尿道炎や膀胱炎などを否定します。
膀胱癌、尿管癌、精嚢腫瘍、前立腺膿瘍、尿路結石、骨盤内腫瘍、憩室炎、性器ヘルペスなどを鑑別します。
慢性前立腺炎 はどのような検査をしますか?
他の病気を否定するために、症状によっては、直腸診、検尿、尿培養、採血、超音波検査、膀胱鏡、CT、MRI、尿流動態検査などを行います。心理的な評価を行うこともあります。
慢性前立腺炎 の悪化因子は何ですか?
飲酒、ストレス、長時間の座位、運転などがあります。
慢性前立腺炎 はどのように治療しますか?
慢性前立腺炎には標準的な治療がありません。患者様の状態に合わせてどの治療を組み合わせて行くか検討していきます。
カテゴリーⅡに対しては抗菌薬の治療を4~6週間行います。ただ抗菌薬のみで症状が改善する人は少ないため
カテゴリーⅢに対するα1遮断薬などを併用します。
カテゴリーⅢに対しては、
頻尿、残尿感、尿意切迫感など尿路症状はα1遮断剤、5α還元酵素阻害薬、抗コリン剤、針灸、ボトックス治療など
うつ状態など精神・社会的要因に対しては抗うつ薬、抗不安薬、カウンセリングなど
前立腺の圧痛、血精液症、下部尿路症状などの臓器特異的所見に対しては、鎮痛剤、α1遮断剤、5α還元酵素阻害薬、ホスホジエステラーゼ阻害薬、ESWL、ボトックス治療(海外で、Falahatkarらによる研究などでは)、植物製剤など
*ESWL(体外衝撃波治療)は主に尿路結石症の治療に使用されています。尿路結石症治療におけるその鎮痛効果は、結石治療中に偶然発見され、その後、ペイロニー病など、さまざまな泌尿器科疾患の治療で研究されています。
カテゴリーⅠ、Ⅱ以外の方で前立腺組織内のグラム陰性桿菌または腸球菌、抗菌薬による治療歴のあるときは、抗菌薬
神経学的状態(過敏性腸症候群、慢性疲労症候群、 線維筋痛症など)がある場合は、抗うつ薬、針灸、植物製剤など
会陰部、骨盤、腹部の圧痛のある場合は、鎮痛剤、筋弛緩剤、理学療法、植物製剤、針灸など
性機能障害のある場合は、ホスホジエステラーゼ阻害薬
その他漢方薬などを組み合わせて治療していきます。
慢性前立腺炎 の予後はどうですか?
慢性前立腺炎は、診断されるまでに数週間または数か月かかることがあります。慢性前立腺炎の一部の人では、症状は数日で消失します。難治な人もいます。症状が数週間または数か月続くか、または数年にわたって現れたり消えたりすることがあります。