陰部にブツブツができました。どうすればいいでしょう?-大和クリニック-木更津市の皮膚科、泌尿器科
陰部にブツブツがあるとき、原因はどういうものですか?
Ⅰ)性病と関係していると思えるときには以下の病気を考えます。
1)潰瘍ができたときは以下の病気を考えます。
1.陰部に小さなブツブツがたくさんでき、小さな水ぶくれがあり、破れて、ただれて痛い(浅い潰瘍がある)ときーーー性器ヘルペスが一番考えられます。性交をしてから2~10日で発病します。間もなく鼠径部のリンパ腺が腫れ、痛みがあり、発熱することもあります。これら4つの中で、最も頻度が高いです。病原体は単純ヘルペスウイルスです。
2.陰部に通常痛みや痒みがない硬いしこりが一個でき、その後破れて深い潰瘍になり、水ぶくれはみられないときーーー梅毒が考えられます。性交をしてから10~30~90日で発病します。10日程して鼠径部のリンパ腺が腫れますが、痛みはありません。通常単発ですが、オーラルセックスによって感染した場合たくさん出来ることもあります。小さなブツブツやただれだけのこともあります、普通は痛みません。時に強い痛みを伴うことも有り、性器ヘルペスと間違えられることもあります。病原体は梅毒トレポネーマという細菌です。2番目に頻度が高いです。
3.陰部に痛くないブツブツができ、後で膿んだ水ぶくれが生じ、破れて痛く(深い潰瘍がある)、血が出やすいときーーー軟性下疳が考えられます。性交をしてから2~7日で発病します。間もなく鼠径部のリンパ腺が腫れ、痛みがあります。稀です。海外旅行で持ち帰って来る人がほとんどで、今のコロナ感染症の時代ではあまり考えなくてもいいかもしれません。病原体は軟性下疳菌という細菌です。
4.陰部にブツブツが1個できますが、痒みや痛みはないです。破れて浅い潰瘍になることもありますが、非常に早く治ります。そのため気がつかないこともあります。ーーー性病性リンパ肉芽腫を考えます。性交をしてから3~12日ほどで発病します。男性では2~4週間後に片側または両側の鼠径リンパ節腫脹をきたし、大きな圧痛を伴います。ときに動揺性の腫瘤を形成します。ときに発熱および倦怠感をきたします。稀です。海外旅行で持ち帰って来る人がほとんどで、今のコロナ感染症の時代ではあまり考えなくてもいいかもしれません。病原体はクラミジア・トラコマチスで、トラコーマ(クラミジアが眼に起こす病気)の起因菌であることからこの名前がつけられました。
*後天性免疫不全症候群(エイズ):急性HIV感染症
HIV感染成立の2~3週間後に、発熱、咽頭痛、筋肉痛、皮疹、リンパ節腫脹、頭痛などのインフルエンザ様の症状が出現しますが、この時期に陰部潰瘍(出現率30~40%)を伴います。
*潰瘍とは:粘膜や皮膚の表面がくずれ、深くえぐれたようになった状態です。
*鼠径リンパ節腫脹:太もものつけ根の部分にあるリンパ腺が腫れた状態です。
2)潰瘍はないとき
1.先の尖った乳頭のような特徴的な形、鶏冠状、カリフラワー状をしたブツブツができ、痛みがないときーーー尖圭コンジローマを考えます。男性の場合、亀頭、陰茎、陰嚢に、女性では大陰唇~小陰唇にかけての外陰部、膣内、子宮頚部、または両性とも口腔内、肛門周囲、尿道口、時に尿道内にもできることがあります。常色から褐色、黒色2~3mm~指頭大のブツブツが多数できます。性交をしてから3週間~8ヶ月で発病します。病原体はパピローマウイルス( 小型のDNA ウイルス)です。粘膜に感染する型には、尖形コンジロームを引き起こす6 、11 型(低リスク型)や子宮頚癌の原因となる16 、18 、31 型など(高リスク型)があります。尖形コンジロームから16 、18 型が分離されることもあるので、感染しているウイルスの型を知ることが、予後の推定に重要となります。ヒトパピローマウイルス6型および11型に対応した4価ヒトパピローマウイルスワクチン(ガーダシル)が9才以上のヒトを対象に接種できるようになりました。
6.1~5mm程度の大きさで、表面がツルツルして光沢のあるなめらかな、しろう様の表面をもち、ドーム状の形をした皮膚の盛り上がりで、その頂点がやや陥凹しているピンク色または白色のボツボツがたくさんあるときーーー伝染性軟属腫(水いぼ)を考えます。皮膚との直接の接触や感染者が触れたタオルやスポンジなどの物を介して伝染します。プール、風呂、サウナなどの水を介して感染が広がる可能性もあります。小児で全身によくみられます。皮膚バリヤー機能の低下しているアトピー性皮膚炎の児に多いです。成人では、性行為によって陰部に感染することがあります。性交をしてから14日~6ヶ月で発病します。病原体は伝染性軟属腫ウイルスです。HIV感染者の20%以上が伝染性軟属腫を併発しているという報告もあります。HIV感染者の場合は外陰部より、顔部、頚部に好発するようです。
2..激しい痒みが有り、そのためかき壊してブツブツができ、陰部をみてみると、1mmほどの毛にへばりついている虫を認めたときーーーケジラミ症を考えます。寄生が長いとき0.1mm~1cmの青い灰色のはんてんを認めることがあります。毛には産み付けられた虫卵を認めることもあります。陰毛の直接接触による感染がほとんどです。毛布、寝具などを介する感染もあります。陰毛だけでなく肛門周囲、脇毛、胸毛、頭髪、眉毛、ひげ、睫毛などにもうつることがあります。性交をしてから1~2ヶ月後に発病します。病原体は吸血性昆虫であるケジラミです。掻痒からでなく、下着に付着した黒色粉状のケジラミの糞から気づく人もいます。
3.亀頭、陰茎に赤いはんてん、ブツブツができ、痒みがあることも、白苔を認めたときーーーカンジダ性亀頭包皮炎を考えます。女性の外陰部カンジダ症から感染することが多いです。性交後数日で発病します。
Ⅱ)性病と関係してないと思えるとき
1)見逃してはいけない病気
1.悪性腫瘍
発疹(ブツブツ)ができ、軟膏などで治療して1~2ヶ月たって治らないとき、ボーエン病、乳房外パジェット病、菌状息肉腫などを考えます。
ブツブツが、色が黒かったり、血が出たり、えぐれていたり、いびつだったり、しこりが大きかったりするときは、基底細胞癌、有棘細胞癌など、より悪性の病気を考えます。
2)慢性再発性全身性炎症性疾患
1.陰部に境界明瞭な深い潰瘍があり、時に高熱が認められるため、性器ヘルペスの初感染と誤診しやすいです。口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍、皮膚症状(皮膚表面の水ぶくれはほとんどみられない)、眼症状の4つの症状をみたときベーチェット病を考えます。また全身性に多彩な症状を起こします。
3)その他の病気
1.かぶれ(接触性皮膚炎)
何らかの特定の物質が皮膚に触れ、炎症(刺激やアレルギー反応)が起きる病気です。とても痒いのが特徴です。ブツブツや赤み、水ぶくれや腫れなどさまざまな症状を伴います。基本的には原因物質が触れた部分に症状が現れ、しばしば境界がはっきりしています。草取りをしたあとにブツブツができたとか(植物)、腕時計のしているとこだけがブツブツができたとか(金属装身具:ほかに指輪やイヤリング、ネックレスなど)、湿布をしたあと、日に当たったら湿布の大きさ、形に一致したブツブツができたとか(医薬品)、化粧品、衣類、家庭用化学薬品、洗剤、動物などです。
2.毛包炎(毛嚢炎)もうほうえん(もうのうえん)
毛穴の奥にある毛根に菌が侵入して起こる炎症のことです。毛根は毛嚢(毛包)に包まれており、この部分に小さなキズ(髭剃りやムダ毛処理の後など)などから毛穴に細菌が入り込み感染し炎症することで発生します。皮膚にいる常在菌である黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌が主な起炎菌です。緑膿菌、マラセチア菌(皮膚に常在している真菌)などでも起きる事があります。顔面や胸、腋窩(えきか)といった脂漏部位や首の後ろ、太もも、お尻、陰部といった擦れやすいところにできる傾向があります。赤みを帯びたぶつぶつや、毛穴に白や黄色の膿を含む盛り上がりなどができる症状です。一つの毛穴にできることもあれば、たくさんの毛穴にできることもあります。痒みはないことが多く、しばしば圧痛(押したときの痛み)を伴います。
3.固定薬疹
原因となる薬剤(感冒薬、非ステロイド性抗炎症薬が多い)を服用する度、数時間以内に同一部位に繰り返してまん丸い赤いはんてんができ、赤いはんてんから、水ぶくれ(比較的大きくなりやすい)、破れてびらん(痛い)、潰瘍に変化する場合固定薬疹を考えます。外陰部、口唇、肛門周囲などの皮膚粘膜移行部に好発します。たくさん出来ることもあります。治癒後に残る色素沈着が特徴的です。赤いはんてんとともに出現する痛みと違和感が主な症状で、発熱などの全身症状はほとんどありません。普段、頭痛や生理痛や風邪で内服しているためその薬が原因だとは本人は気づきにくいです。原因となる薬を使用しないようにしなければいけません。
4.傍外尿道口嚢腫、陰茎縫線嚢腫
傍外尿道口嚢腫:おしっこの出口に接しその片側あるいは両側にできる嚢胞(のうほう:液体が貯留した袋状の腫れ物)です。
陰茎縫線嚢腫:おしっこの出口から陰茎の裏側・肛門にかけての縫線上(ほうせんじょう、中心にある線)にできる1個あるいは多発性の半透明な比較的軟らかい嚢胞です。
二つともに、一般的に先天性(生まれながらの)と言われています。良性で、嚢胞のための症状がなければ、経過観察でも問題ないです。具合によって手術となります。
5.陰嚢被角血管腫(いんのうひかくけっかんしゅ)、陰唇被角血管腫
表面に過剰な角化を伴う血管拡張性の血管腫(血管内皮細胞が増殖してできる良性腫瘍)で、陰嚢、陰唇にできる1~数mmほどの暗赤色のブツブツのことをいいます。柔らかく血豆のように見え多発します。30歳以降に増加、高齢の男性に多いです。高齢になるほど多く見られるので、老化現象(老人性血管腫)のひとつともいわれています。下着についた血をみて、血尿がでたと心配されて来院される方もいます。無症状のことが多く、経過観察で問題ありません。出血などを心配され治療を望まれる場合に、電気で焼いて凝固させたりする治療法などを行います。*子供の陰部に赤いブツブツができたらファブリー病(細胞内での糖脂質の分解に必要な酵素が生まれつき足りないために、全身の細胞に糖脂質が蓄積する先天代謝異常症)によるびまん性被角血管腫を疑う必要があります。
5.粉瘤、血腫、帯状疱疹、疥癬(性感染症でもあります)、性病以外の亀頭包皮炎、股部白癬、カンジダ症(性病と関係ない)、小児の場合:栄養素欠乏(亜鉛、ビオチン)、外傷、脂漏性角化症、毛嚢炎
4)治療の対象にならない
1.フォアダイス状態
局所的に増加した脂腺が1mm程の黄白色のブツブツした顆粒状に見える状態です。包皮や陰唇部、口唇、頬粘膜などにできます。機能的に問題なく、基本治療対象となりません。どうしても気になる人はレーザーなどで治療します。
2.真珠様陰茎小丘疹
亀頭冠・陰茎冠状溝に沿って1~2mmの常色、褐色の半球状のブツブツが配列する状態です。男性の20~40%(日本)に認める、よくある状態です。基本治療対象となりません。
3.非性病性陰茎硬化性リンパ管炎 陰茎の包皮にさく状蛇行状にできる軟骨ぐらいに硬いしこりで20~40才の男性に多いです。性交などによる機械的刺激のために皮下のリンパ管が一時的に閉塞してリンパ管が腫れるものです。ほとんど痛みなどはありません。2~4週間で自然消退します。