獣肉アレルギー マダニ咬傷と肉(ほ乳類の肉)との関係は?-大和クリニック-木更津市の皮膚科
マダニにかまれて心配なのはツツガムシ病だけではありません。
AGさんは、仕事で野山にいくことが日常でした。そのため、マダニに何回もかまれたことがありました。かまれる度に、ツツガムシ病(こちらは同じダニでもツツガムシにかまれて起きます)の心配をしていましたが、今までは、何事も起きていません。ある日、遅い夕食で豚肉をたらふく食べました。翌早朝起きてみると体中がかゆく、蚊に刺されたようなミミズ腫れができていました。
獣肉アレルギーの原因は何ですか?
α-Gal syndrome(獣肉アレルギーの一つ)
α-Gal syndromeの原因は獣肉タンパク質に結合する糖鎖ガラクトース-α-1,3-ガラクトース(α-Gal)です。マダニにかまれることにより、マダニの唾液腺中にある糖鎖α-Galに対して過敏状態になり、よく似た構造をしている獣肉タンパク質に結合する糖鎖α-Galに反応してアレルギーを引き起こします。つまりマダニと肉には似ている物質があるということで、それに反応してしまうのです。獣肉を食べてすぐではなく、3~6時間後(遅発性)にじんましん、かゆみ、唇、顔、舌、喉、またはその他の体の部分の腫れ、息切れ、ゼーゼー、鼻水、くしゃみ、頭痛、腹痛、下痢、吐き気、嘔吐、アナフィラキシーなどが起きます。複数回のマダニの咬傷で起こりやすくなります。時間の経過とともに多くのダニに刺された人は、より重篤な症状を発症する可能性があります。
獣肉アレルギー とマダニとの関係はどのようなものですか?
マダニ咬傷による経皮感作が原因となり、ウシやブタ、ヒツジ、ウマ、シカなどの赤身の肉、哺乳類から作られた製品(ゼラチン、牛乳、乳製品など)の摂取で主に発症します。鶏肉は問題ないです。カレイの魚卵にも 似た物質があるということです。また非常にまれですが、重度のα-Gal syndromeを持つ一部の人々は、特定のワクチンや薬の成分に反応する可能性があります。新しい薬を服用したりワクチンを接種したりする前に、医療提供者に相談してください。例えば抗悪性腫瘍薬、セツキシマブの初回投与でもアナフィラキシーショックを起こした報告があります。α-Galは、魚、爬虫類、鳥、または人には認められません。
獣肉アレルギー はどのような人に多いですか?
犬を飼っている人が多いそうです。犬の散歩の時にマダニにかまれる可能性があります。血液型がA型、O型の人に起きます。B型、AB型の人は糖鎖構造がα-Galに似ているため起きないそうです。
獣肉アレルギー の予防はどうしますか?
マダニ咬傷の回避により治癒します。
ダニに刺されないようにすることが予防の鍵です。樹木が茂った草地にいるときは、長ズボンと長袖のシャツを着用し、虫除けを使用して、ダニに刺されないように保護してください。外で時間を過ごした後は、全身のダニチェックを徹底的に行ってください。お子さん、ペットにダニがいないか、十分注意してください。
獣肉アレルギー の検査はどうしますか?
特異的IgE検査 牛肉・豚肉、カレイ魚卵、セツキシマブ
保険適⽤外ですが、 α-Gal特異的IgE抗体が診断に有⽤です。
獣肉アレルギー の治療はどうしますか?
抗アレルギー剤
気管支拡張剤
ステロイド剤
エピペンなどを使用します。
ツツガムシ病とはどういうものですか?
ツツガムシ病はOrientia tsutsugamushi を起因菌とするリケッチア症です。ダニの一種ツツガムシによって媒介されます。汚染地域の草むらなどで、ダニの幼虫に吸着され感染します。吸着時間は1~2日で、ツツガムシから人への菌の移行には6時間以上が必要です。ツツガムシの成虫は体長1mm、刺すのは幼虫のみで、幼虫は約0.2mmで肉眼で確認することは困難です。ツツガムシは血液ではなく体液を吸うために吸着します。排出する二酸化炭素に反応して吸着することが分かっています。潜伏期間は5~14日間(通常およそ1週間)です。症状は発熱、刺し口、皮疹が主要三徴候と呼ばれ、それぞれ約90%の患者で認められます。全身倦怠感、食欲不振とともに頭痛、悪寒、発熱などを伴って発症します。体温は段階的に上昇し数日で40℃にも達します。刺し口の所属リンパ節は発熱する前頃から次第に腫脹します。第3~4病日より不定型の発疹が出現します。顔、体に多く四肢には少ないです。重症になると肺炎や脳炎症状を来します。意識障害、多臓器不全、播種性血管内凝固を起こすこともあり、死に至ることもあります。治療には、早期に本症を疑い、適切な抗菌薬を投与することが極めて重要です。第 一選択薬はテトラサイクリン系の抗菌薬です。本症の予防に利用可能なワクチンはなく、ダニの吸着を防ぐことが最も重要です。
ダニ媒介感染症とはどういうものですか?
千葉県では上記のツツガムシ病が有名です。ダニ媒介感染症は、ウイルスや病原体を保有した動物を吸血したダニの体内でウイルスが増殖、そのダニがヒトを吸血、吸着することで感染します。ツツガムシより大きいマダニに吸血されて起きる感染症には重症熱性血小板減少症候群(SFTS:Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome)や日本紅斑熱、ライム病、ダニ媒介性脳炎などがあります。重症熱性血小板減少症候群(SFTS)はマダニに吸血されてSFTSウイルスに感染すると6日〜2週間の潜伏期を経て、発熱、消化器症状(食欲低下、嘔気、嘔吐、下痢、腹痛)が多く認められます。頭痛、筋肉痛、意識障害や失語などの神経症状、リンパ節腫脹、皮下出血や下血などの出血症状なども起こします。重症の場合は死に至ることもあります。致死率は6.3〜30%と報告されています。治療は対症的な方法しかなく、有効な薬剤やワクチンはありません。
千葉県は関東地方では数少ない日本紅斑熱やつつが虫病のリケッチア症流行地であり、毎年患者が報告されていますが、これまでにSFTS患者は報告されていませんでした。今回、これらリケッチア症を疑われながらも診断の付かなかった患者に対する遡及調査でSFTS症例が存在していたことが明らかとなり、関東地方においてSFTSウイルスに感染した患者の報告として初めての事例となりました。2021年6月22日(国立感染症研究所)
世界初のオズウイルス感染症の事例です。
2023年6月23日、国立感染症研究所から日本初、いやむしろ世界初となるオズウイルス感染症の事例が報告されました。茨城県在住の70代女性が、マダニ刺咬後に発熱を呈し、血小板減少、肝障害、腎障害、CK上昇、フェリチン高値、凝固障害などがみられ、最終的には心筋炎によると思われる心室細動で亡くなられてしまった」という事例です。